社会課題

ジェンダー平等は進んでいるのか?女性活躍推進法の現状

日本社会におけるジェンダー平等は、長い間重要な課題とされてきました。特に女性の社会進出に関する議論は、1970年代以降に高まりを見せ、近年では「女性活躍推進法」の施行をはじめとする政府の取り組みによって、一段と注目を集めています。

しかし、国際的な視点から見ると、日本のジェンダー平等に関する取り組みは依然として遅れていると言わざるを得ません。本記事では、女性活躍推進法の現状を中心に、日本のジェンダー平等の課題と展望を深掘りしていきます。

日本の現状:ジェンダーギャップ指数の位置付け

スイスの世界経済フォーラム(WEF)が発表する「ジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index)」によれば、日本は2023年のランキングで146か国中125位という低い位置にあります。

特に「経済活動への参加と機会」や「政治的エンパワーメント」の分野で順位が著しく低いことが課題とされています。

指数が低い主な理由

  • 女性の管理職比率が低い:2022年時点で、日本の女性管理職比率は約13%にとどまり、主要先進国の中で最も低い水準にあります。
  • 政治分野での女性比率が低い:衆議院における女性議員の割合は10%前後であり、世界平均(約25%)を大きく下回っています。
  • 賃金格差:男女間の賃金格差も依然として大きく、女性の平均給与は男性の約75%程度にとどまっています。

女性活躍推進法の概要とその狙い

女性活躍推進法は、2016年4月に施行された法律であり、女性が働きやすい環境を整えることを目的としています。この法律では、企業や地方自治体に以下のような義務を課しています。

  1. 女性活躍に関する状況の把握:各企業が自社における女性の雇用状況や活躍状況を把握することを求められます。
  2. 行動計画の策定と公表:一定規模以上の企業(従業員301人以上)は、女性の活躍を促進するための行動計画を策定し、その目標を公表する義務があります。
  3. 情報公開の推進:女性管理職比率や育児休業取得率などのデータを開示し、透明性を高めることを促進します。

政府の追加施策

2022年には、この法律の対象が従業員101人以上の企業に拡大され、小規模企業にも女性活躍推進の責任が求められるようになりました。また、認定制度「えるぼし」や「プラチナえるぼし」により、女性活躍推進に積極的に取り組む企業が評価される仕組みも導入されています。

女性活躍推進法の成果と限界

成果

  1. 女性管理職の増加:施行以降、一部の企業では女性管理職比率が改善しています。例えば、大手企業の中には30%以上の比率を達成した例も見られます。
  2. 育児休業制度の利用拡大:男性の育児休業取得率も徐々に上昇しており、2022年には12%を超える水準となりました。
  3. 認知度の向上:女性活躍推進の重要性が社会全体に浸透し、ジェンダー平等に関する議論が活発化しています。

限界

  1. 中小企業での取り組みの遅れ:中小企業では資金や人材の制約から、女性活躍推進法の要件を十分に満たせていないケースが多いです。
  2. 実質的な文化の変化が遅い:職場文化や固定的な性別役割分担意識が依然として根強く、法改正だけでは十分な変化が見られない場合があります。
  3. データの偏り:数値目標の達成が優先され、質的な改善が見過ごされることも指摘されています。

改善への道筋

日本がジェンダー平等をさらに推進するためには、以下のような取り組みが必要です。

  1. 教育と意識改革:学校教育や職場研修を通じて、性別役割分担の固定観念を解消する取り組みが必要です。
  2. 男性の働き方改革:育児休業の取得促進や長時間労働の是正を通じて、男女ともに働きやすい環境を整備することが重要です。
  3. 政策のさらなる強化:法律の強制力を高め、中小企業への支援を拡充することで、すべての職場での女性活躍を実現します。
  4. 多様性のあるリーダー育成:女性リーダーを積極的に育成し、意思決定の場に多様な視点を取り入れる仕組みを構築する必要があります。

おわりに

女性活躍推進法の施行は、日本社会におけるジェンダー平等の実現に向けた重要な一歩でした。しかし、課題は依然として山積しており、特に実質的な文化変革には時間がかかると見られます。持続可能な社会を築くためには、政策の強化に加え、企業や個人が主体的に行動を起こすことが求められます。

日本がジェンダー平等を実現し、すべての人が能力を発揮できる社会を築くために、私たち一人ひとりの意識と行動が問われています。